4TH GENERATION4代目 加納將資の哲学
守破離
わたしのものづくりにおけるキーワードとなるのが「守破離」ということばです。呉服業界に入って45年、ものづくりをはじめて40年、今のスタイルでものづくりをスタートさせてから35年、常に守破離の流れの中に身をおいていたと思います。
- 守
- 修行に出ていた銀座きしやで受け入れられるような独特の味を、
図案家の和田好市氏と創り出していった - 破
- 徹底して粋を追求し始めた時代があって、
繻子、金環触などの新しい世界を生み出した - 離
- さらなるオリジナルの世界に入っていき、
今度は粋と格調の融合の時代に変化を遂げてきた
修行してきた銀座きしやでは多くのことを学びました。しかし、類まれなる才能の持ち主である帯図案家・和田好市氏との出会いが大きな転機となりました。まさに、和田氏との出会いがわたしの人生の守破離を形作ったとも言えるのです。
40年間ずっと考え続けてきたのは、面白いものを作りたいということでした。奥行きと格調が和田さんの図案から生まれてきて、全く独特の世界を作り出せるということに自信を持ってきました。最大公約的なものは作らない、そんなオリジナルな考え方がものづくりにいかされて、コアなファンの皆様にご支持をいただくことになったのだと思います。つまり、着る人と作る人のベクトルが一致したものができた故に、加納幸の世界というものが確立されてきているとも思っています。
面白いものとはなにか?古典の写しはやりたくありませんでした。古典の中に潜む何か、余韻を感じさせるものを創作するという難しいハードルをあえて目指しました。琳派でも、琳派そのものではなく、琳派の中に見られるほんの僅かなものを感じ取り、それを全く新しい世界として表現したいという追求です。
全ては何かの模倣であるかもしれないが、ただの模倣にすぎないものを生み出すのは望んでいません。おおげさかもしれませんが、縦糸と横糸しかない世界で小宇宙を表現したいと考えて取り組み続けています。
現在の加納幸の製品コンセプト
粋さと上品さの両立です。粋に走ればおもしろいが品がなくなり、上品に走るとつまらなくなるという相反することを両立させたかったのです。世の中のものはえてしてどちらかに振ってしまうものですが、加納幸のデザインであり佇まいというものは、粋であり上品であると思います。実際にお客様からそのように評価をいただくことも多いのですが、うれしいと思う反面、さらに自分に高いハードルを課しながら次のステージへ進んできました。
今、次の代(5代目、専務)がものづくりを手がけるようになっていますが、わたしのポリシーを守るべきとも思わないし、むしろ全く新しいものを作っていってほしいとさえ思いながら見守っているところです。
女性の美のために
加納幸において、女性を美しくすることが最大の企業理念です。加納幸の製品にはすべて、日本の伝統文化、和装を通じて女性の美のために役に立ちたいという願いが込められています。さらに、織物を通じて西陣織を世界に冠たる存在として位置づけるものとしたい、世界に通用する織物を研究開発していきたいとう思いを次世代に託していきたいと思っています。
※2019年9月末日をもって代表取締役および取締役を退任し、会長に就任いたしました。
その他の活動
2014年 | 日本学術会議材料工学連合講演会・伝統材料工学分野にて、論文「西陣織の三大織組織の基礎と応用~帯の折技術の体系化に向けて」発表 人間工学会関西支部ユーザビリティ・技能・運動カテゴリにおける論文「帯の軽量化による締めやすさの向上、着物着用時の疲労軽減を目指して」発表 |
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2015年 | ロスで開催されたHCI Internationalで、論文「A study of the tacit knowledge on the design of kimono patterns from Japanese paintings」を発表 |
2016年 | 日本機械繊維学会第69会年時大会2日目の基調講演「伝統的繊維製品および匠の技」 カナダのトロントで開催されるHCI Internationalで、論文「A study on development of a wide elegant textile by using Japanese traditional textile technology of Nishijin-Ori」を発表 |